相続で後悔しないように (その10)

①相続税が払えなくなるかと不安

【限定承認、相続放棄を考えてみよう】
相続税以前に借金が多いのかもしれない、という不安が大きい人もいるでしょう。

相続というものは、被相続人が亡くなった瞬間に被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人に相続されるという考え方をします。
プラスの財産というのは、不動産や預貯金などを意味しますが、マイナスの財産とは聞き慣れない言葉です。
これは負債、借金などの負担です。

民法は、相続の仕方を3つ用意しました。

一つ目は全ての財産負債を相続するもの。ほとんどがこれです。
二つ目は相続放棄 負債だけではなく財産も要らないというもの。
明らかな債務超過の場合には相続放棄をする人がいます。
三つ目が限定承認、財産の範囲内で負債を背負うというものです。
これを選択するには、相続を知ったときから3ヶ月以内に相続人全員が家庭裁判所に申し立てる必要があります。3ヶ月という期限と、相続人全員という条件があるのです。

負債というと、ほとんどの人の場合、銀行ローンが典型的でしょうが、他にも個人ローン、マチ金などから借りている人もいるでしょう。商売をしていれば仕入れ先の他、個人保証をしているケースもあるでしょう。
こうした借金は本人以外はよく分からないことが多いのです。
したがって、亡くなって混乱している場合にどこからどれだけの負債があるのか分からない家族が結構現れます。
「多分、借金が多いだろうが自分たち家族の住む家は何とかしたい」

そうした相続人が選択を考えるべきは限定承認です。

限定承認を認められ、住宅ローンの抵当権が自宅の土地建物についているときには、民法932条但し書きの規定が力になってきます。
民法932条 (限定承認者が)弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付しなければならない。但し、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続税さんの全部または一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。

限定承認をした後に、自宅の土地建物の価格(競売によって売却されるであろう価格)を抵当権者に支払えば抵当権を抹消していただける、という規定です。

これを使って、残された家族が住む家を売却せずに住み続ける例をいくつか扱いました。

ここで注意すべきなのは、税法の規定です。
税法は限定承認をすると、相続財産は売ったことと見なし、譲渡所得税を支払えという規定になっています。限定承認の財産と債務を計算してマイナスであれば、譲渡所得税もありませんが、限定承認後、調べてみるとプラスであった場合、これは税金を納める必要がでてくるのです。

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