相続で後悔しないように (その7)

③家族で揉めないだろうか

【遺産の大小と相続争いは関係がない】親が亡くなり、姉、弟だけが残った家族がいました。姉は配偶者にも先立たれた60代、親と同居して暮らしていました。弟はつましいながらも自営業、生活には困りません。

遺産として残ったのは、母屋の土地建物(時価4千万円)とアパート(時価2千万円)。それにアパートローンが千五百万円ほど残っています。

弟は言いました。「実家の土地建物は姉ちゃんがもらえば良い。オレはアパートを売って残ったお金だけで良いよ」
姉にかなり譲歩した提案と思いましたが、これに対する姉の返答は正反対。
「お父さんはアパートの家賃収入を生活の足しにするように言っていた。今20万円以上の手取りが入ってくるアパートを売るなんてダメです。生活できなくなってしまう。」
「姉さん、アパートはあと5年もすれば老朽化して経費がかかってしまう。部屋も空いてしまうかもしれない。売れなくなる前に売れば、今なら何百万円か残るんだ。今売らないと、将来、ローンだけが残るアパートになってしまう」

自分の生活費を稼いでくれるアパートがなくなると実家の土地建物は収入も生みません。固定資産や光熱費など経費だけが出ていくのです。
アパートローンの返済ができなくなるとどうなるでしょうか。返済が滞れば銀行は抵当権の実行によって資金回収を図ります。それでも回収できない金額は債務者に請求するでしょう。収入のない姉ではなく、自営業の弟に返済を求めるでしょう。
弟の不安は返済ができなくなったときのアパートを売っても返せない心配なのです。

姉は生活を考え、弟は借金の返済がどうなるか、悩みます。
アパート資金の借入など相続対策として多用されますが、返済計画をどうするのか相談がまとまらないと大変です。
債務が残った遺産分割は、問題を抱えているとも言えます。いざとなったときに使える現金預金が必要だと思います。

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