相続で後悔しないように (その6)

②自分がいないと何がどうなっているのか分かる者がいない。

【遺族が変な人に騙されないように】
葬儀が終わって3ヶ月が経った頃に、遺族を訪ねてくる人がいるそうです。

「お父さんに少しお金を貸してあったんだけれど---」
「お父様は絵に造詣が深かったですね。預けてあった○○の絵をお返しいただきたいのですが---どうしてもないのなら弁償をしていただきたい。」

相続放棄、限定承認の期限は相続を知ったときから3ヶ月です。
子どもたちが知らない借金は法定の期間を経過してから請求をしてきます。
さらに、ひどい人になると、そんな事実はなかったのに死人に口なし、嘘八百を並べ立て、有りもない借金を取り立てようとするものまで現れます。

相続税の申告準備のため、公図を取り寄せてみたら土地の形状が現況と違う。一部を隣の人が使っているような気がする。
「お父さんと立ち会いをして塀を作りましたよ。公図の方が間違っているんでしょう」

いずれも、当事者がいないから訳も分からない。相続人はほとんど反論もできないことが多いのです。

しかし、これらのことを本人が遺言書に書いてあったらどうでしょうか

問題が起こりそうなことは本人ならおよそ予想できます。

「私の父は、几帳面でした。
『誰それには○百万円のお金を借りて、何時何時返してある。××にはまる百万円を貸してあるが、返さないかもしれない。そのときはそれでも良い。×番の土地の一部を隣の人が平成○年に家を建て替えるまで貸してくれと言うから、貸すことにした。後○年したら返してもらえ。そのことについての資料は書棚にある。よく見ておくように』
××さん、貴方には○百万円を父は貸してあるようですが、父は貴方から借りることはしないと思いますよ」

家族の中でもあり得ます。
次男が借金を抱えてしまった。他の兄弟にも内緒で父親が2千万円を用立て始末してあげた。そのうち、次男と父親がそりが合わなくなり、疎遠になってしまった。2千万円は生前贈与にあたるものだが、父親しか知らないこと。父の死亡後、遺産分割協議の時に、次男は2千万円のことは触れずに財産分けをしろ、と言ってきた。

いずれにしても、父親が死んでしまうと,「死者に口なし」
残された遺族が困らないように、記録は残しておくべきなのです。
メモでも、帳簿に記した注記でも、個人が書いた記録であれば意味があります。

特に争いになることが予想されるのなら、異論の挟まれないように公正証書遺言がお勧めです。

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