リバースモーゲージ

大震災の報道を見て「自分たち鑑定士に何ができるのか」を考えた。

いざ、というときに理科系の人は町のため、人の為にすぐ役に立つ技術、ノウハウがある。その点、文化系の人間には体力しかない。さらに還暦を迎える人間には、がれき除去も足手まとい、何日も続けられないだろう。医療、介護の知識もない。重機のオペレーション技術もないのだ。

マチを、日本を元気にしようと呼びかけ、義援金を日赤に送るくらいしかなかった。

しかし、ひと月たった被災地の人に必要なのは、数年後を考えられる心の余裕であり、将来への希望である。生活の場と糧を無くした人々に気持ちのゆとりを与える必要がある。

そこで提案したいのは、リバースモーゲージを震災被災者に適用できないかということである。

リバースモーゲージは、自分の住まいなどの不動産を担保にして、お金を借りる仕組みである.ローンを組んで住宅を買う仕組みとは逆に、手持ちの不動産を担保に生活費やまとまったお金を借りる仕組みだ。武蔵野市では、早くから収入のない高齢者世帯にお金を貸す事業を進めてきた。数年前からは全国の社会福祉協議会が高齢者世帯を対象にして生活費を貸している。
これと同じようなことを被災地にも適用したらどうであろうか

①被災者の土地を担保にする
②津波によって流された土地も、地域精通の鑑定士が評価する
③担保掛け目は6割程度とする
④利息は10年間無利息、11年目からは長期プライムレート 20年を貸付期間とす
る  20年後であれば、復興も終わっているだろう
⑤貸し付け方法は、毎月一定額の支給方式、あるいは一括方式の選択
土地の価格が1500万円であれば、担保される貸付金額は900万円
毎月30万円の支給とすると30ヶ月間、毎月の収入が確保できる。
この30ヶ月の内に、新たな生活設計を行えばよいことになり、被災者は気持ち
を楽にして自分の生活を考えて貰えるだろう

⑥返済方法は一括返済が原則であるが、月賦、半年賦も併用可とする
⑦土地所有者の死亡時には、一括精算とする。したがって債務は相続人の負担に
ならないことができる
⑧貸付機関は、各県社会福祉協議会の外に、市町村の直轄窓口とする方式にすれ
ば、高齢者でない一般の人も使いやすくなる
⑨義援金はいただくモノ、「自分よりも困っている人に回してください」という日本人が多い中、必要な資金を自分の権利を担保に得られることになれば被災地の人も手を挙げやすくなる

この意見を4月5日の日本不動産鑑定士協会理事会に提出してみた。

この事業を進めるには資金の点、事業者の点を解決するため、国に働きかけなければならない。政治家にもお願いしなければならない。しかし、一番重要なことは地元の鑑定士が立ち上がらなければ進められない。国にも予算がないだろうから、全国から集まっている義援金の一部をファンドとして取り込み貸付基金としたらどうだろうか。

不動産鑑定士が国のために行える公的な事業としてアピール度も高いと思うのだが、皆さんのご意見を伺いたい

鑑定評価は(有)埼玉不動産鑑定所へ