調停委員にも専門が

裁判所の調停委員には、民事調停委員と家事調停委員が居ます。
調停は、裁判所の紛争解決の仕組みの一つ。話し合いでお互いに相手の言い分も聞き、よりよい解決を早くすることが出来ます。裁判官の出した判決と同様に法的な拘束力(執行力)もあります。
判決と異なるのは、当事者が合意をするかしないか判断することであり、合理的合法的であれば自由に決められます。その反面、合意が成立しなければ調停は不調、強制的な解決は出来ません。その調停ですが、民事の事件は地方裁判所(簡易裁判所)で行い、夫婦、親子など家事に関する事件は家庭裁判所で行います。

不動産の分割に関することでも、当事者が第三者であれば地方裁判所で民事調停委員が、遺産分割などは家庭裁判所の家事調停委員が担当します。

かつて、かなりの田舎にも裁判所の支部がありました。それぞれの支部で調停委員が任命されます。
ところで、地方では調停委員の適格者はあまりいません。そのため、民事と家事の両方を兼ねる調停委員もかなりおられました。
その後、全国の裁判所は統合が進みました。現在では、家事と民事を兼ねる調停委員はごくまれです。それぞれが家事か民事か片方の調停委員になります。
したがって家事の調停委員は、家賃や境界の争いを担当しません。一方、民事の調停委員は遺産分割や夫婦が離婚時に財産を分与する事件にも関与しないのです。

全国の不動産鑑定士のうち千人以上が調停委員に任命されています。
しかし、その半数近くは仕事が忙しいこともありますが、日程が合わずに調停事件を受任していない人と考えられます。
また、前述のように家事と民事に分かれるため、遺産分割を専門に事件をこなしている調停委員は全体の2割居るのか居ないのか、でしょう。

私は平成5年10月の任命、さいたま家庭裁判所川越支部の家事調停委員では現在3番目に古くなりました(来年4月には一番古くなってしまいます)
調停委員も70歳定年ですから、年配の方はリタイアされてしまうのです。
20年を超えて調停の仕事に関わりました。その間数百件の家族にお会いしました。質問されて困ったこと、解決策に悩んだたびに基本書や判例を漁りました。
その結果、自分なりに得た遺産分割に関するヒントや考えたことも上梓しました。

遺産分割事件は、調停がまとまらなければ審判に移行します。そのため、審判に移行した時のことを予想して調停を進める必要があります。
そうでないとすれば、調停と審判で判断が違い、当事者を混乱させ、事件も複雑化させます。
事件の内容に応じた裁判所の考え方を踏まえての調停が求められるのです。
判例を研究し、それぞれのケースに対応して判断が出来る不動産鑑定士調停委員が対応をした方が近道と言えます。

不動産鑑定士に遺産分割を相談する前に、「あなたは、家事の調停委員をされていますか?」とお尋ねされたらいかがでしょうか。

鑑定評価は、埼玉不動産鑑定所へ