公的評価とは

「公的評価」 鑑定の依頼者が公的団体(国や市町村等)である場合、
「公的評価」とよぶことがあります。 公的評価には、「公共用地買収の評価」「地価公示、地価調査の評価」「税務のための評価」「競売のための評価」「裁判のための評価」などがあります。

「公共用地買収のための鑑定評価」  公共のために必要な土地は、所有者から買収をして使うことになります。自由主義社会の日本ですから、「売る人と買う人が交渉して価格を決めればよい」と考えることもできます。一般の人同士の取引であれば、それも良いと思います。しかしながら、公共機関は公平、公正に手続きを進める必要があります。高く買うということは、周辺で買収に応じた他の地主と比べて不公平になります。比較して安く売ってしまった地主から苦情を申し立てられるでしょう。何よりも過剰な補償をすることは税金の無駄遣いです。  早く売りたい、お金がすぐ欲しい、と言う地主からは安く買っても良いでしょうか。その土地の価値よりも低い補償金額で買うということは正当な補償をしていないということになります。憲法第29条に違反することになるのです。「公共用地買収には正当な補償をして所有権を取得しなければならない」、と憲法29条第3項は規定しているのです。 不動産鑑定士は、その地域の不動産のあり方を捉え、正常価格はいくらであるか、調査の上、第三者の専門家として鑑定評価額を報告します。公共機関はその価格を重視して最終的な価格を判断するのです。 「地価公示、地価調査の評価」 地価公示法に基づき、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1月1日現在の標準地の1㎡あたりの価格を判定し公示するもので、この価格を公示価格といいます。公示価格は、一般の土地取引の際の目安とされるとともに、公共事業用地の取得価格などを決める際の指標として利用され、また、土地取引の規制における土地価格算定の規準とされています。 国を始めとして公共機関が土地を買収するときや、不動産鑑定士が鑑定評価を行うときには、公示価格を基準としなければならないと定められています。  国土利用計画法によって土地取引規制のため評価しやすいように地価調査価格も設けられました。それが地価調査による基準地価格です。地価公示と半年間ずれた毎年7月1日の価格を調査します。 「税務のための評価」  市町村税収の4割を占める固定資産税や、国の課税する相続税、贈与税は納税者に公平でなければなりません。住んでいる市町村によって課税の基準が異なってしまうと不公平感が広がります。土地の価格が高騰したことを受けて、全国のバランスを取るために、地価公示価格を基準として評価をすることになりました。固定資産税の場合には地価公示の7割、相続税の場合には地価公示の8割をメドとすることになったのです。売却することの多い相続税に比べ、固定資産税は保有しているだけで現金化することは少ない、ということも7割評価の理由だと聞いています。  固定資産税の場合には、状況が似通った地域ごとに標準地を設け、評価します。市街地ではさらに、その標準地の価格を基に路線価を敷設し、個別の土地価格を求めていきます。税務署の場合には、市街地では個別路線に対応した地点の価格を求め、路線価を決めます。郊外では固定資産税価格の1.1倍を目安として評価します。  不動産鑑定士は、固定資産税の標準地評価を行いますが、大量な地点を同時にバランスよく評価するために、複数の不動産鑑定士が意見を調整し、様々な角度から均衡がとれるように価格を決めていきます。 「競売のための評価」  借金の担保とされる抵当権があります。支払が滞ると担保となった不動産を売却してお金に換え、債権者に配当されます。国の機関である裁判所が強制的に不動産を売却し、現金化するのです。そのためには、不動産の状況を調べ、それに応じた適正な価格を求める必要があります。その不動産を求める人は、不動産の現状がどのようになっているのか、最低落札価格はいくらなのか、基本的な情報がなければ入札できません。一方、お金に困ったからといって、二束三文の価格でその人の不動産を売ってしまうことは、憲法29条の私的財産権を守ることができません。適正な価値がいくらであるのかは、不動産鑑定士が個別に調べ、価格を追求していくのです。 競売と同じような仕組みに、国や地方自治体が行う「公売」があります。税金の滞納があると、最終的には鑑定士が評価をした上で公売に掛けられるのです。 「裁判上の評価」  家賃や地代の額が争いになったときや、遺産や夫婦の財産を分割しなければならないときには、基本となる不動産の価値を明らかにしなければならなくなります。和解や調停で収まるのなら厳密な価格は必要ありませんが、判決文を書かなければならないときには、裁判所は不動産の専門家である鑑定士に評価を命じます。  不動産鑑定士は、不動産の特性、個別的な要因に応じた価格を求めますが、事案に応じて、その不動産を巡り、当事者の公平がいかに求められるか、裁判官と同様に事案の解決案を探り、専門家としての意見を求められます。

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