実家の土地を残して欲しい

家を出た子どもたちの中には、「○○が家を継ぐのは良いが、売られては困る。だから遺産分割には応じない」という人がいます。

世間には、『遺産分割後に土地を売り東京のマンションに引っ越してしまった』とか、『数年して長男が死亡、遺産は全て嫁さんのモノになったら処分してしまった』とか、
実家の土地がが人手に渡り、なくなってしまうことがあります。相続発生時には相続共有として、相続人全員の合意がなければ処分ができません。
しかし、遺産分割が終了すれば、その不動産は取得した人が自由に処分できます。
兄弟でも、口を挟むことはできません。

そのため、遺産分割協議の中で次のようなことを主張する人が出てくるわけです。

(1)遺産分割協議を行わない
(2)実家の土地を共有とする
(3)実家の土地に仮登記をつけておく

(1)は、遺産共有状態をそのままにすることです。今話し合いができないことを自分たちの子どもの代まで先送りすることに他なりません。
子どもたちからすれば『お爺さんの話は親同士でやってよ、俺がおじさんと話するのは嫌だよ』と迷惑な話です。

また、処分はもちろんとして、建物の維持など様々な問題が起こるたびに、相続人が集まって協議をしなければならず、大変煩わしいことになります。

(2)は、実家の土地の一部でも、それも10分の1あるいは100分の一でも共有地を残しておけば、一括売却ができない、ことを狙っています。
これはかなり効果があるでしょう。

(3)は共有ではなく、所有権移転あるいは抵当権の仮登記をつけるのですが、仮登記という制度はある条件が満たないときにつけるのが本来。
被担保債権がない、等抹消される怖れもあります。
(2)(3)ともに、当面は処分されない縛りが付いたことになりますが、いずれ、これらの登記も抹消しなければならないときがやってきます。

そのときに共有者が元気で、話し合いが可能なら良いのですが、寝たきりになっていたり、あるいは死亡して多数の相続人を相手にしなければならないことも考えられます。

共有関係はイレギュラーです。入合林などは別として、誰かが単独で利用するような宅地や農地は、いつかは単独所有にしなければならなくなります。
長男のBさんは
『父親が先祖から受け継いで守ってきた土地、私も子どもや孫に引き継がせる。長男は預かっているだけだ。俺は処分をしない、俺を信じて家と農地を守らせてくれ』
でも、周辺はマンションも増えてきた住宅地です。兄弟からすると、兼業農家を続けるというBさんの言葉は信じられないようです。

その不安材料を解消するために、私が提案したのは、次の条項でした。

『実家の土地は、Aが100分の1,Bが100分の99の共有とする。AはBに対してA所有持ち分を10年後に贈与する。もしそれまでにAが死亡したときは遺贈とする』

10年間、売却できないのであれば、実家の土地を残して欲しい、というAさんの希望はほとんど叶えられるのではないですか、
また、自分が生きているうちに実家の土地がなくなるのは、見ていられない、というのは分かります、この条件ならBさん家族にも負担が少ない、と思いますよ

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