物件は動いている

昨年9月(リーマンショック)の頃は金融機関の融資が止まり、
不動産取引も激減した。余裕のあった不動産会社にも不安がいっぱい広がり、手控えてしまった。 さいたま地裁川越支部の競売は、10月以降売却率が5割を割り込んだ。入札された本数を全て合計しても売却物件数を下回る状況だった。

競争原理が一部の物件にしか働かなくなってしまった。年が明け2009年が始まると徐々に入札状況も改善してきている。それよりも好調に転じたのは東京地裁本庁である。

9割以上の物件が売却され、競争率(入札本数)も平均10件以上を維持している。 平均買い増し率(売却基準価格に比べどれくらい高い価格で落札されたかを示す)も1.4倍であり、川越の約1倍に比べとても高い。競売市場性減価7割を考えると、ほぼ正常価格水準である。 さらに、特筆すべきなのは、取り下げ率が2~4割に及ぶことである。競売の売却基準価格が決定されると、債権者は任意売却をするか、それとも競売による売却を進めるか選択することになる。取り下げ率が高いのは競売の落札額よりも任意売却が高いことを示すのである。それだけ取引が活発になっていることを示している。 東京23区では物件が不足してきており、優良物件は取り合いだとも言う。 供給過剰感の強い製造業と違い、不動産市場はリーマンショックを乗り越えつつあるのだろうか