不動産鑑定士の責任

不動産鑑定士の責任について、東京高等裁判所の判決が7月19日にあった。

ゴルフ場を担保にした抵当証券が発行されたが、抵当証券発行会社が破綻したために、その担保評価を行った鑑定士に対し損害賠償請求が求められた事件である。5623万円の支払義務を認めた東京地裁判決に対し、高裁は地裁判決と反対に鑑定士の責任を否定した。

東京高裁判決の概要(大和都市管財事件)daiwatoshikanzai(060719).pdf

地裁判決と高裁判決の対比daiwatoshikanzai-taihi(060719).pdfDownload file

2人の鑑定士のうち、一人は前月に和解が成立していたため、平成7年の鑑定を行った鑑定士にのみ判決が下された。
平成7年当時の鑑定水準では、収益法を適用しなかったことが注意義務違反ではない、として高裁は責任を否定した。しかし、抵当証券の担保として鑑定士の責任が重く、担保適格でない場合には損害賠償責任がある、というのは高裁も認めている。
原告が積算価格の不当性を強く主張していないことから、責任が否定された、とも考えられ、最高裁で、改めて鑑定士の敗訴、不法行為責任が認められることも考えられる。
山間地のゴルフ場が市場性を持つか否か、一般投資家が購入する抵当証券の担保として問題がなかったのか、不動産鑑定士の専門家責任が求められた事件である。