安ければ良いわけではない

数年前のことですが、「親の土地を安く売ったら、
税務署から手取金額を上回る高い税金を払うように言われた」という相談がありました。
譲渡所得税は売却代金から原価、経費を引いた譲渡益に課税されます。
安く売ったら譲渡所得も小さくなりますから税金は少なくなるはずです。

詳しく聞いて見ますと、
親の土地を相談者が5千5百万円ほどで知り合いの建設会社に売りました。その土地は親から相談者が測量等の経費を引いた5千万円ほどで取得していたのです。相談者にはほとんど利益はありません。
「住宅がほしい人に良心的な建て売り住宅を供給するという地元業者の熱意に感動して応援したのですが、父親に2千万円の所得税がかかるというのです。」

相続税路線価に基づいて調べてみると、その土地は1億3千万円ほどに評価されました。税務署の言うことは、1億3千万円の価値のものを父親は息子に 5千万円で売った。半値以下で売っているのだから低額譲渡として5千万円の売買金額は否認する、1億3千万円で売ったこととして原価を引いた分に2割の税金をかけるということなのです。
相談者の父親が直接建設業者に売却したのであれば、第三者に対する譲渡ですから、低額譲渡とされることは滅多にありません。しかし息子に対し安く売ったことは息子にその分利益を与える行為とされるのです。

「譲渡を計画される段階で税理士さんに相談されたら良かったですね。」既に第三者の名義になっている土地ですから白紙に戻して契約がなかったものとすることは出来ません。線路沿いであり、形の悪い袋地であることを考慮し、評価額は1億5百万円ほどにすることが出来ました。低額譲渡自体を否定することは出来ませんが、納税額は少なくなりました。

この案件が私のところに事前相談されていれば、鑑定評価額1億5百万円の55%くらいである5750万円を父親→相談者の売買金額にし、地元業者には6200万円で売却する計画をアドバイスしたと思います。そうすれば父親に低額譲渡による課税はなかったと思います。

譲渡額が小さければ、利益もないのだから譲渡所得税は少なくなる。
そうではなく認定課税されてしまうことに注意をするべきでしょう。

好きですか川越
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