共有物分割と判例

不動産を取得すると不動産取得税を課される。
売買や贈与でなく、不動産の交換による取得でも同様である。
さらに、二つの不動産の交換は二つの土地が等価でなければ差額分に譲渡所得課税が課される。
逆に言えば、同種(宅地と宅地など)の固定資産を交換するときに、価値が高い方の土地の2割以内に交換差額がなるならば特例により交換差額にのみ譲渡所得税が課される。

それでは、共有関係の解消によるもので実質的に所有権の移動がない場合にはどうだろうか。
この場合、等価であれば譲渡所得税は課されないが、不動産取得税はどうなるだろうか。

このことについて最高裁判例が出た。

一画地として利用されてきた共有土地(駐車場)を2つの土地に分けて、共有者がそれぞれ取得し、不動産取得税を計算する場合に
高裁は、「一画地を構成する各筆の土地が所有者を異にする場合には、地積案分の方法ではなく、それぞれの土地の価格の割合で案分する方がより公平に適する」としたが、
最高裁は「固定資産評価基準により2筆以上の宅地を一画地として認定して画地計算法を適用する場合、各筆の評点数は、当該画地の単位面積あたりの評点数に、各筆の宅地の地積を乗ずることによって算出される」とし、一画地全体の単価を採用して各土地価格を計算し、それが持分に応じた土地価格を上回る部分は新たな土地取得とされるとした。

判例のケースは、共有物分割の前後ともに一体とした駐車場であり、AB共有の土地の一部がA単独所有となり、残りがB単独所有となったものの、利用形態は全く変わらない。

これが、隣接する二つの土地が両方とも共有であり、共有物分割後にそれぞれ単独所有となったケースなら、上記の結果とは違ったことになったのではないか。
その場合は、固定資産税評価上別の画地として扱われ評価額はそれぞれ計算されるからである。

これまで、二つの土地の交換特例を使った節税策に関連して鑑定評価を行ってきた。

たとえば、法人の所有する建物の建つ個人の持つ土地と法人の持つ駅前の賃貸用土地を交換することにより、
地代を支払っていた法人の賃料負担を無くし、一方では個人の相続税対策(事業用賃貸不動産)をはかるケースであった。
この場合、法人所有土地と、個人所有土地を評価し、ほぼ等価であれば良いとされ、鑑定評価の活用例として重宝された。

ところが、上記最高裁判例は『固定資産評価に辺り、一体画地評価であって面積案分とする』としていて、
高裁が示した『分割後の個別的要因を加味した評価額』ではない。
判例集からは、高裁における原告主張に鑑定評価額を使われたのかは不明であるが、これからは、『分割後の鑑定評価額を活用しましょう』とは言えないのかもしれない。
少なくとも、共有分割の前後で利用関係が全く変わらない場合には、分割後の評価における単価が違う、とはいいにくい。

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