相続で後悔しないように (29)

②自分がいないと何がどうなっているのか分かる者がいない。

電話相談例の中から1つ報告します

「25年前に父が購入した不動産があり、その時の売り主Aさんは買ってから7年くらい住んでから父に売ったらしい。Aさんに訊きたいことが
あるんだけれど、Aさんの所在が分からないから、その当時Aさんが誰からどんな風に買ったのか知っている仲介した業者は調べられないだろうか」

30年以上前のことを調べるのは大変なことです。
Aさんの前の所有者氏名は登記情報から得られるかもしれません

そのことを言ったあと、
「ところで、そもそも何のためにそんな古い話を調べたいのですか?」と訊くと

相談者は
「父はもう他界しているが、最近父の寝ていた部屋の時計が夜になるとクルったり、閉めていたはずの襖がなぜか開いていたりする。どうにも気味が悪い。

テレビ番組ではかつてその家で自殺する人がいたり、古くなった家ではその建物自体に怨念がこもっていることがあるらしい。
元の持ち主にそんなことがあったのか、なかったか、尋ねたい」

「妻は、 『古くなったゼンマイ式の時計だから、時々止まるのも仕方ないでしょ。襖だってあなたが開けたままにしていただけじゃないですか』と言って笑っているけれど、そんなことじゃないんです。」

私は、
「たとえ、元の持ち主が分かって訪ねられたとしても、元の持ち主に訊いても何も答えてくれないのが予想されますよ。だって、その家がそういう事故物件だということが本当だったら損害賠償や、何かイチャモンを付けられるのではないか、と心配するからです。仮にまた、元の持ち主から『そうです』、と言われても、あなたも困るのではないですか。何も解決しないのですから。」

「むしろ、今のお話は、あなたの心の中に不安の基があるんだと思います。」

「この際、徳の高いお坊さんか神主さんに祈祷(お祓い)をして貰ったらどうでしょうか。あなたの思っている家についている怨念をなくして貰ったらどうでしょう。」

相談者の場合には、父から情報を得ていなかったことが不安の種だったのでしょう。
相続とは直接関係のない話ですが、気になり出した当事者にとっては重要な空白部分が頭にこびりつき気になって仕方がないのです。

お父さんが元の持ち主がどんな人だったのか、買うことになったときのいきさつを日記にでも書いてあったなら、余計な心配もしなかったかもしれません。

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