土地売却の寄与分

母親の遺産は、長男の住む自宅(相続税評価約2000万円)と預金5000万円。

相続人は兄と妹の二人だけ、申立人の長女は不動産を希望しない、ということなので、『解決しやすい案件』と思いました。

調停が始まると、思いの外厳しい言葉の応酬が待っていました。

(兄)預金5千万円は、母親の土地を売った代金がほとんど。その土地は道路に面しない土地、私の土地と一体として売れたからおカネになった。一緒でなければ盲地だから2千万円でも売れない土地。私が高く売ったのだから、半分の2千5百万円は私の寄与分。残り2千五百万円と土地を合わせて半分にする。妹には2250万円で良いはず。

(妹)長男の土地の相続税評価は居住用財産の特例を受けて8割減を受けた計算。本来は1億円の価値がある。
合計1億5千万円だから、7500万円が私の相続分。少なくとも預金全部をもらう権利がある。

(兄)妹は、10年ほど前に新興宗教にかぶれ、5千万円ほどの借財があった。親に泣きついて返済してもらった。そのおカネは特別受益と言える。従って妹には主張できる相続分はない。

(妹)新興宗教から身の借金は5千万円もない。2千万円ほど。しかもそれは父から応援してもらったモノ。今回は母の相続だから関係がない。

悩ましい事件です
妹の主張する自宅の評価は合理的です。1億円と見るべきでしょう。
次ぎに土地売却に伴う長男の貢献(寄与分)を認めるべきでしょうか
母親の土地単独の評価や、長男の土地の位置関係、さらには売買契約当時の母親、長男の状況など、考えるべき事項がありそうです。
貢献度がゼロもないでしょうが2分の一は多すぎる。5分の1,1千万円ほども貢献があったと言えるでしょうか。
長男に対し、私は次のように言おうと思いました。
『自宅の価値を1億と見て、外に特別受益や寄与分がなければ、遺産は1億5千万円。妹の相続分は7500万円。
あなたの言う売却について寄与分が認められたとしても5千万円以上にはなります。預金の5千万円を渡して解決するのはどうでしょうか?』

この件は、自宅評価が高いために長男を説得できました。自宅評価が当初の2千万円だったとすると、問題は複雑です。
調停ではまとまらない事件だったかも、と思います。

鑑定評価は、埼玉不動産鑑定所へ