相続税のための鑑定評価活用法

弊社では、相続税関連の鑑定評価が多くのウェイトを占めてきた。しかし鑑定評価書のの利用方法について、少し補足説明をする必要が出てきたようだ。

先日、税務署の評価専門官とお話をする機会があった。(専=評価専門官、今=今西)

(専) 『最近の相続税の調査では、税務署の路線価に基づかずに鑑定評価書の評価額を採用した申告書は、内容や場所にかかわらず国税局の対応にしています。』
(今) 『もう10年以上前のことですが、所轄の統括官と協議をして鑑定評価額に基づき申告、納税をして当事者に喜ばれたケースがありました』
(専)    『バブル崩壊直後は分かりませんが、最近、特に広大地評価が導入されてからはすべて国税局の扱いになっており、所轄署の判断のみということはありません』
(今)    『広大地評価は0.35~0.6の補正率が適用され、かなりの減額です。町中の戸建て分譲地の取引水準を見ると鑑定評価ではそこまで行かないことも多くあります。また、鑑定評価は実勢価格ですが、路線価に補正率をかけるときは路線価が地価公示価格の8掛けになっていますから、それだけでも鑑定評価よりも低くなりやすいと言えます。したがって、広大地が適用になるのなら鑑定評価額を採用するよりも納税者としては有利です』
(専)    『申告をする場合には、とりあえず税務署の路線価に基づいた相続税申告をし、税務署の調査が終了し納税額が確定してから、改めて更正の請求をすることをお勧めします。そのときに鑑定評価書を附けていただければ良いでしょう。』
(今)    『明らかに低額な鑑定評価額は論外ですが、取引実勢を踏まえた地価水準を基に    合理的に導き出された鑑定評価額は説得力があります。そうしたものなら所轄署段階の審査によって調査が終了するのではないですか。また、いったん確定した    税額が納税されると厳しい財政である国としてもお金を戻すのはしたくない、厳しい査定があるのではないですか?』
(専)    『相続が発生すると資産のことだけでなく、遺族の生活や家業の継承など様々なことを決める必要があるでしょう。なにかと忙しいのですから、とりあえず申告をしておき、5年以内に更正の請求をすることができます。これは法律によって認められた国民の権利ですから、いったん納められた税金を返さないように厳し く査定をするようなことはありませんよ。一方、当初の申告時に資産額が少ないとなると過少申告加算税、時には重加算税がかかることもあります』

これまでは所轄税務署の担当者とよく協議して、ネゴシエーションをすれば問題なく勧められることがあった。しかし、バブル崩壊後、土地の価格が下がり、鑑定評価による申告が殺到した。中には問題がある不動産鑑定士も居たのかもしれない。所轄の担当者に判断を任せた場合、同じような案件でも人によって結論が違ってしまうこともあるだろう。
何より、広大地評価の導入後は、鑑定評価額以下になることもあるのだから、鑑定評価書を検討する必要もない。所轄署の担当者の負担も軽減したと思う。
相続税の申告は、被相続人の死亡から10ヶ月後。税務当局は金融機関や売買当事者などの反面調査を行い、周辺資料が整備されてから申告者本人への調査に入る。したがって申告から1~2年後に調査が入ることが多いらしい。もっとも遺産総額1億円未満の場合には基礎控除や居住用資産などの軽減処置があることもあって税額も低くなる。そのため、税務当局の調査は課税資産額が1億円を超えるような申告者に対し重点的に行われると聞いている。申告者からすれば、1~2年後の調査時に、税務署職員に計算ミスや申告漏れをチェックされることになる。「鑑定評価書の中身も細部にわたり調べます。申告が鑑定評価額を基にしていなければ採用した評価額に対する疑問は小さくなる。その分申告者には有利じゃないですか?」評価専門官の言葉である。
必要以上に目立たないような申告内容にするのも、相続税の申告テクニックかもしれない。

【結論】
今後の相続財産に関してお役に立てる機会は 次のようになるだろう
Ⅰ 相続発生前(予防的対応) 
対象になる資産を分割あるいは整理して遺産総額を減少させる。
具体的な方法
①小規模住宅得冷凍利用できる物件を考え、整理する
②交換、売買などにより問題の物件を整理する
③納税する資金を手当てするため、資産の売却準備を行う
Ⅱ 相続発生時
申告時 評価を低くできる方法
①分割取得者ごとの評価
②面大地評価の適用可否判断
③相続発生時に鑑定評価額を検討する(更正請求に使用する)

Ⅲ 更正請求時
相続税についての税務署調査終了後、相続税評価の更正請求を行う
(このときに鑑定評価書が、威力を発揮することになる)

鑑定評価は、埼玉不動産鑑定所へ