身内だからちゃんとした報告書 2

親族の場合、「事を荒立てないでおこう」

とその場では何も言わない人がいる。
しかし、何年か後に
「あのときには、私が折れたのだから、今回は—」

と言い出されると、困ってしまう。

遺産分割などは、たとえ相続の事後処理は終わっても、親族関係は続いていく。
相続の時に言いそびれたことがあると、その人は何時までもそのことを忘れることができないのだ。何でも言ってもらうのがよいが、そのほかに前提条件となることを記録として残しておけば、分かりやすい。
当時、その分割が客観的に見ても妥当であったことを証明するために、鑑定評価書を使われる人も多い。当事者だけで決めたと言っても、客観的な裏付けである鑑定書をたたき台として、結論を求めたのだという事実が後々問題を起こさせない工夫である。

分割方法、最も良い活用方法、法律的な問題、税務上の問題、残された老親の扶養の問題など、相続に関連して考えるべきことは、不動産の経済価値だけにとどまらない。問題を一つ一つほぐしていく工夫は、鑑定士の活用にかかっている。