日照権等損害賠償額を決めるための評価

最近の住宅建設の多くはマンションになってきました。
都市の中では、土地の高度利用が求められます。低い一戸建て住宅を想定している低層住宅地域を除くと、法定容積率は200%以上になります。敷地目一杯に建てることはほとんど不可能ですから、

容積率を十分使って家を建てると3階建て以上になります。その結果、北側の家には陽が当たりにくくなります。

 これに対して建築基準法や条例で一定基準の日影の制限をしています。ここで注意すべきなのは、日当たりを保証する規定ではなく、一般的な許容限度を超える日陰を規制する考え方だ、ということです。日本人は、水と安全はタダであると考えている、といわれますが、農耕民族であった日本人は日当たり、お日様の恵みを重視するようです。

人の多く住む都市に住む以上は、日当たりは保証されない、日当たりの良い土地を求めるにはそれなりに自分で努力し、お金を出す必要がある、ということになります。東京の真ん中で確実に陽が当たるようにするには、南側の土地を広く買って建物の影が来ないようにするか、高いマンションの上の方に住むしかないのです。それとも、高いビルから太陽の動きを追いかける鏡を使って日差しを呼び込む装置も実用化されています。
日照権についての考え方は、徐々に変わってきました。その結果、日当たりの悪くなった土地の価値減を必ず補償するような鑑定評価書の使い方は少なくなりました。

今、増えてきているのは、容積率を十分使っていない建物(たとえば協会や記念館など古くからある建物)の隣の土地に、その使っていない容積率を移転し、隣の土地に大きな建物を建てられるように、容積率の移転にはどのくらいの評価をすべきか、あるいは、眺望の良い土地の価値を守るために、将来も隣の土地に高い建物を建てないようにしてもらうにはどのくらいの補償をすべきかなどの依頼です。
この場合には、相手との交渉材料の叩き台になります。判例や学説の考え方も明確でなく、実際に行われた実例も少ないため、ケースバイケースということでしょう。
参考になる考え方は、公共補償において行われる区分地上権や高圧線下補償、航空路、無線アンテナ、パラボラアンテナのための補償評価の考え方です。

 

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